2024.07.17 お知らせ

ブレイン・テック ガイドブックvol.2 -責任ある製品開発の手引き- を公開

2024年7月17日
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
株式会社アラヤ
慶應義塾大学

内閣府が主導するムーンショット型研究開発事業のムーンショット目標1の研究開発プロジェクト「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」(プロジェクトマネージャー:金井良太、代表機関:株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、以下、ムーンショット金井プロジェクト)において、このたび、事業者が一般消費者向けのブレイン・テック製品を開発・販売する際や、事業でそれらを活用する際に考慮すべき要件を整理した「ブレイン・テック ガイドブック vol.2」を公開しました。

<プロジェクトマネージャーのコメント>
ムーンショット金井プロジェクトでは、「Building Trust in Braintech(ブレイン・テックに対する信頼構築)」を掲げ、一般の皆さまが安心してブレイン・テックを利用できる世界の創出を目指しています。そのためには、事業者が責任を持って製品やサービスを提供することが不可欠ですが、これまで指針や基準は存在しませんでした。今回公表する「ブレイン・テック ガイドブック vol.2」は、ルールや基準を意図するものではありませんが、事業者が製品やサービスの開発・販売に際して考慮すべきポイントを網羅的にまとめたものです。
これまでに公表した「ブレイン・テック ガイドブック ver.1.3(2023年6月23日に更新)」、「ブレイン・テック エビデンスブック ver.1.3(2024年3月29日に更新)」と併せてお読みいただくことで、本分野の現状や課題、可能性を十分に理解できる内容となっています。ブレイン・テックに関する正しい理解が深まり、健全な製品やサービスが普及し、多くの方が恩恵を受けられる世界の実現を願っています。

<背景>
本プロジェクトでは、これまでに一般消費者が市販のブレイン・テック製品について理解を深めるための「ブレイン・テック ガイドブック vol.1」と、ブレイン・テックの有効性と安全性に関する科学的根拠を集約した「ブレイン・テック エビデンスブック ver.1」を公表してきました。これらの成果は国際的にも高く評価され、OECDが2024年4月に公表した「Neurotechnology Toolkit」にガイドブックとエビデンスブックが紹介された他注1)、UNESCOが進めるニューロテクノロジーのルール作りにプロジェクトマネージャーの金井が委員として選出されています注2)
このようにブレイン・テックに対する信頼構築に取り組む過程で、一般消費者向けのブレイン・テック製品には、一般的な家電や健康器具と同様の指針や基準が適用されていることに気づきました。しかし、ブレイン・テックは思考や人格を司る脳という特殊な臓器の情報を読み取り、これに働きかけるため、人の心身に与える影響や安全性には一層の配慮が求められます。一方で、製品のリスクに見合わない厳しすぎる規制は、開発のコスト増大や販売の遅れを招き、有益でリスクの低い製品を消費者が利用する機会と、そこから得られる新たな科学的知見による脳科学分野の発展を妨げる可能性があります。製品の機構や使用目的に応じた、柔軟性のあるルールを考えることが、この分野の健全な発展と信頼構築には欠かせません。

<ブレイン・テック ガイドブック vol.2の内容>
本書では、事業者が一般消費者向けのブレイン・テック製品を開発・販売する際や、事業でそれらを活用する際に考慮すべき要件を整理し、手引きとしてまとめました。具体的には、「各種法規制やガイドラインへの対応」「安全性の確保」「科学的な妥当性の検証」「消費者に分かりやすい情報開示」といった項目を設け、関連法規やガイドラインの遵守、および消費者の保護を最優先としながら、事業者自らが責任を持ってブレイン・テック製品を開発する際の指針となる内容を収録しています。
ただし、本書の内容は基準や規制の代わりとなるものではなく、製品に認証を与える目的のものでもありませんので、その点にはご注意ください。本書がきっかけとなり、一般消費者向けのブレイン・テックに関する基準や規格についての議論が活発になり、本分野が健全に発展していくことを願っています。

注1)OECDが2024年に公表した「Neurotechnology Toolkit」は、ニューロテクノロジー分野における責任あるイノベーションを支援するためのガイドラインです。このツールキットは、政策立案者が倫理的、法的、社会的課題に対処しながら、技術イノベーションを推進するための具体的な行動や国際的な事例を提供しています。巻末にある各国の先進事例の紹介(PUBLICATIONS AND OTHER RESOURCES)において、ブレイン・テック ガイドブック、エビデンスブックが紹介されています。Neurotechnology Toolkit
(最終取得日:2024年7月17日 https://www.oecd.org/content/dam/oecd/en/topics/policy-sub-issues/emerging-technologies/neurotech-toolkit.pdf

注2)UNESCOはニューロテクノロジーの倫理に関する勧告を作成するために、脳神経科学、法学、倫理学等の多分野の専門委員24名を集めた検討委員会を発足し、2024年に初会合を開きました。ブレイン・テック ガイドブック、エビデンスブック制作の活動が評価され、本プロジェクトマネージャーの金井も専門委員として抜擢されました。
Ethics of neurotechnology
(最終取得日:2024年6月11日 https://www.unesco.org/en/ethics-neurotech/expert-group?hub=83294 )

<本件に関するお問い合わせ先>
■報道全般に関するお問い合わせ
株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)
総務部 総務チーム
TEL:0774-95-1176
FAX:0774-95-1178
Email:pr@atr.jp

■ガイドブックの内容に関するお問い合わせ
ブレイン・テック ガイドブック作成委員会 事務局
E-mail:info_guideline@brains.link

■研究開発プロジェクト全般に関するお問い合わせ
金井 良太
株式会社アラヤ 代表取締役
E-mail:pmo@brains.link

プレスリリース(PDF)