商業施設・店舗におけるインストアマーケティング・顧客行動分析への画像認識AI活用

in store marketing

1. インストアマーケティングとは

インストアマーケティング(店舗マーケティング)とは、店舗で行われる、消費者の購買意欲を促進させるために行う販売戦略のことです。ショッピングモールやデパートなどの大型施設、または施設内の個々の店舗や飲食店などの実店舗が、売り場での売上をアップさせるために行う施策です。
近年、オンラインショッピングの傾向が高まる一方で、ある消費者心理に関するアンケートによると、未だに「店舗のショッピングを好む消費者が半数以上いる」というデータもあります。また、最近の傾向としては、オンラインストアで商品を調べてから実店舗に来店して購入するといった、オンラインとオフラインの両方を活用する顧客も増えてきています。インストアマーケティングは、このように実店舗に来店する顧客の行動を分析し、購買意欲を高め、売り上げに誘導するまでの仕組みを構築する、店舗運営において必要不可欠な取り組みです。

具体的なインストアマーケティングの施策には、以下のようなものがあります。

  • POP:point of purchaseの略で、店舗の入り口や店内の壁、商品棚などに掲示するポスターや広告
  • デジタルサイネージ:商業施設の通路や店舗の入り口などに置かれた大型のモニター上に動画や画像を切り替えて表示することで、通行客の注目を引くことができる
  • 店舗レイアウト:顧客が店内で商品を探しやすくしたり、回遊しやすくしたりするための、店舗内の商品棚の配置設計
  • 待ち時間の短縮:レジや飲食店の入店を待つ時間を短縮することで、サービス向上や顧客満足度の向上を狙う

このようなインストアマーケティングで効果を高めるためには、何よりもまず、来店した顧客の行動を把握・分析することが重要です。例えば、顧客がPOPやデジタルサイネージを見たときの反応や、店内でどのエリアを通ったのか、そしてそれらの行動が購買につながったかどうかなどを分析します。

2. 顧客の動線・行動分析のために取得すべきデータ

インストアマーケティングでは、顧客の動線や行動を把握し分析することが、販売戦略の改善の第一歩になります。動線分析により、POSデータの分析だけではわからなかった、店内でのマーケティング施策それぞれの効果(商品への接触率や購入率など)が把握できるようになります。

以下は、インストアマーケティングのためのデータ分析の一例です。

  • 顧客行動分析:来店客の属性(性別・年代)別の滞在時間、動線(歩行距離)、商品接触率、購買率など
  • 店舗前通行者分析:店舗前の通行人数カウント、店舗の入り口まで来て入店しない人の行動分析
  • 広告効果分析:POP・デジタルサイネージの注視の有無や、その後の行動
  • 店舗レイアウト分析:レイアウト変更の前後比較、複数店舗での比較など
  • 待ち時間分析:レジ待ち時間・入店待ち時間、会計の所要時間など

これらの情報を分析することで、POPや店舗レイアウトなどを改善し、さらに改善前と改善後の比較検証などを実施することができます。これにより、従来は店舗運営者の感覚値で判断していたことが、よりデータに基づく確かな店舗運営を可能にします。

3. 来店顧客の行動・動線を分析するアラヤのAI技術

アラヤの画像認識AI技術を結集した顧客行動分析AI(人流解析AI)を活用することで、顧客の行動や動線の分析を実現します。具体的には、店舗に設置されている監視カメラや、新たに設置する固定カメラで、人の動きをトラッキングすることができます。

特にアラヤの顧客行動分析AIには、複数台のカメラを連携した行動分析が可能であるという特長があります。従来の技術では複数台カメラの情報の連携・統合ができないという課題がありました。アラヤの技術では、複数台のカメラの情報を連携することで、広い店内や商品棚による死角が多い場合などにも対応できるようになります。

■デモ動画
以下の動画は、人の動きをAIがトラッキングしている様子です。
監視カメラの映像から、店内の人を検知しトラッキングします。また、人の位置をフロアマップ上にマッピングします。

こうした人をトラッキングする技術に加え、人物の画像から性別や年代を推定するAI技術人の視線を検知するAI技術人の動作を検知するAI技術などを組み合わせ、より詳細な顧客の動線・行動分析が可能になります。

4. アラヤの顧客行動分析AIを活用したインストアマーケティングの事例

アラヤの顧客行動分析AIによる、店舗におけるマーケティング分析の活用事例を紹介します。

POPやデジタルサイネージの内容による入店率・購入率比較

店舗の前を通行する人がPOPを注視したかどうかや、その後の行動の分析を行うことができます。これにより、POPのデザインや、POPに掲載している割引キャンペーンを変えたことの効果測定やABテストの実施が可能です。

具体的には、次のようなことが実現できます。

  • デザインの異なる2つのPOPを店舗入口に掲示し、POPを見て入店したかしなかったか(入店率)を比較し、顧客が好む広告デザインを把握する
  • キャンペーン内容が異なるPOPを掲示し、POPを見て購入したかしなかったか(購入率)を比較することで、より効果的なキャンペーンを把握する

店舗レイアウトの比較・検証

店舗内の商品棚の配置を工夫することでも、売上アップを狙うことができます。例えばチェーン店で、異なるレイアウトの店舗での顧客の行動・動線を分析・比較することで、どちらのレイアウトのほうが入店率や商品接触率、購入率、滞在時間などが良いのかを検証することができます。

例えば次のような比較をすることが可能です。

  • アパレルの店舗で、女性用を手前に配置する場合と、男性用を手前に配置する場合の比較
  • スーパーで、入口近くに野菜を配置する場合と、惣菜を配置する場合の比較
  • コンビニで、棚の中の商品の配置を変えた場合

飲食店での各テーブルに設置されたタブレット端末による追加注文の獲得

飲食店で、テーブルごとに注文用のタブレット端末を設置している場合、そのタブレット上のカメラが客層(人数・性別・年代など)や行動(食事や飲み物の減り具合など)を検知し、状況に応じた提案をすることで、客単価のアップなどにつなげます。

具体的には、以下のようなことが実現できます。

  • 食事の減り具合を検知してタイミングよくデザートを提案する、飲み物の減り具合を検知して追加ドリンクを提案する
  • 性別や年代に応じたデザートメニューを提案する
  • デザートの注文が無い場合には店員に知らせ、会計を促し回転率アップにつなげる

待ち時間の短縮・レジ要員の人数やATMの台数の最適化

店舗でのレジでの待ち時間短縮はサービスの向上や販売ロスの防止などにつながりますが、実現のためには、来店客数に応じたレジ係の人員の配置(シフト)が必要です。これは、銀行や行政の窓口でも同様です。また、スーパーのセルフレジや銀行のATMなども、必要な台数の設置が必要になります。こうした人員のシフト計画や機械の台数計画のためには、店内の混雑状況や来店客の待ち時間、人数を見える化し、ピーク時間を把握することが必要になります。
また、空いている時間帯は店員を少なくするなどシフトを調整することで、無駄な人件費の削減にもつながります。

5. 顧客の安全管理でのAI活用例

ここまで主に、店舗での売上アップを目的とする施策へのAI活用を紹介してきましたが、同じ顧客行動分析AIを用いて、来店客の安全対策も同時に行うことが可能です。こうした来店客にとって「居心地の良い」設備やサービスの提供が、ロイヤリティ強化にもつながります。

具体的には、アラヤの顧客行動分析AIで、次のような安全管理を行うことができます。

  • 迷子の捜索
  • 不審者の追跡
  • 車いす、白杖などサポートが必要な人を検知
  • 転倒、うずくまりなどの検知
  • コロナ感染防止のための、人の密集エリアの検知

例えば商業施設などで、常に広いエリアの監視カメラを注視することは困難ですが、AIが必要な検知を行い、係員と連携することで、より低負荷での安全管理を可能にします。

6. まとめ

この記事では、商業施設や店舗における、インストアマーケティングや顧客行動分析への顧客行動分析AI・画像認識AIの活用について解説しました。アラヤでは、店舗運営へのAI技術導入をサポートします。お気軽にご相談ください。

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